最近、メンタルヘルス関係の記事などで「toxic positivity」という言葉をよく目にすると思います。
「positivity」(ポジティブであること)が「toxic」(有毒、有害)になるというこの意味は、要するに「有害なポジティブさ」という意味です。
「世の中にあるネガティブなものすべて」に対抗するポジティブな言葉。
一見、ポジティブは良いと思われてきましたが、苦しい状況に置かれているときには、そうした言葉を言われ続けたり、見続けるのが苦痛になることもあります。
そこで、トキシックポジティビティの問題についてご紹介したいと思います。
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トキシックポジティビティとは?
トキシック・ポジティビティはどういうことなのでしょうか?
その定義はこちらになります。
トキシック・ポジティビティとは、心の痛みを抱えていたり、困難な状況にあっても、ポジティブな考え方をするべき、または、「ポジティブなバイブス」だけを発信するべきだ、という、自分、または他者による決めつけのことである。
Zuckerman博士は、トキシック・ポジティビティにはさまざまな形態があると言っています。
たとえば、ネガティブな意見や、ネガティブな考え方を真っ向から否定したり、「明るい面を見なさい」、「持っているものに感謝しなさい」と言うような「ポジティブさ」。
さらにヤバくなれば、「ポジティブでいれば、良いことがやってくる」などと言ってくることもあり、無数のバリエーションがあります。
こちらのトキシックポジティビティが、多くの人を苦しめていると言われています。
なぜなら、有害なポジティブさ(toxic positivity/トキシック・ポジティビティ)とは、どんなにつらい状況であろうとポジティブな考え方を維持すべきだという信念です。
ネガティブな感情は絶対悪と位置づけられ、ポジティブでいることや幸せでいることが強迫的に勧められる状況だからです。
有害なポジティブさとは?その具体例
それでは、トキシックポジティビティの具体的な例にはどんなものがあるのでしょうか?
様々なバリエーションがありますが、例としてはこのようなものがあります。
- 人生を揺るがす不幸を経験した人に、「この経験があなたを強くする」「物事はなるべくしてなる」「物事には全て良い面がある」などと言う
- 悩みの相談に対して、「ネガティブすぎる」「重く考えすぎ」などと言う
- 悲しい時や落ち込んだ時に、気持ちを切り替えられない自分自身を「弱い」「メンヘラ」などと責めたてる
- 理想的な人として、ポジティブな人や、いつもメンタルが安定している人のことを出してくる
- “幸せは自分の気持ち次第”のようなメッセージを送り、いつもポジティブに見える人、ネガティブな感情を出さない人を“強い”や“理想”と位置づける
- 自分を高める時間に使うべきだと強く勧める
有害なポジティブさに対する指摘は、以前から存在していました。
ですが、利用者が自分のキラキラした面だけを見せがちなインスタグラムなどで他人のポジティブな姿ばかりが目にとまるなか、ポジティブな人生を送ることにプレッシャーを感じるという意見が少しずつ蓄積してきました。
今はグーグルでも検索されている用語となっています。
トキシックポジティビティが有害になる理由
トキシックポジティビティが有害に感じられる理由にはいくつか理由があります。
私も実際に、ネガティブなタイプなので、「ポジティブさ」や、「変わること」を求められることを苦痛に感じた経験が沢山あります。
全てが順調にいっている人が存在するのか?
今現在、すべてが順調にいっている人が果たして存在するのでしょうか。
「全てが上手くいかなきゃいけない」、「幸せな毎日を送るべきである」、「幸せを感じなければならない」…これは脅迫概念です。
これは人の人生や、挫折や苦しみをまるごと否定することに繋がります。
心が曇り空の日も、雨の日も、体調が優れない日も、人生には、色んなシーンがあって当たり前です。
全てが順調にいくなんてことは誰であろうとありえないし、それすらもあなたにとって必要な経験。
それも含めて、あなたの一部だからです。
本人が経験している感情を否定することになる
どんな時も、ポジティブな人やハッピーな人はいるかもしれません。
でも私が思うに、それはその人自身の「気質」です。
もちろん、みんながみんな、トキシック・ポジティビティだというわけではありません。
喜びや幸せを体験するのは純粋に素晴らしいことです。
だけど、自分のポジティブさの押しつけは、その人が経験している感情と気質を否定することに繋がります。
「OK」そうに見せなければならないというプレッシャーを与えられると、当たり前の感情とその人が否定されてしまいます。
またこのプレッシャーにより、苦しみや悲しみを感じているのは自分に欠陥があるからだ、という印象が与えられます。
それが内在化されると、自分は弱い、不完全である、というコアビリーフになります。
二次感情を増幅させる
先程も述べたように、人間の、痛み、悲しみ、嫉妬などの感情は、経験の一部であり、また、一過性のものです。
こうした感情を抱いたという理由で自分を否定されることで、それよりはるかに激しく、不適応な二次感情(たとえば恥の感情)を抱くことになります。
トキシック・ポジティビティは心の状態を否定するだけでなく、二次感情を増大させる原因に繋がるのです。
有害なポジティブを押し付けない方法と対処法
有害なポジティブをいつしか自分も誰かに押し付けているかもしれません。
また、ネガティブな人は、多くのポジティブな人の発言に苦しめられてきたと思います。
そんな人に対処法をご紹介したいと思います。
感情の存在を認めて共感すること
自分や他人が悲しみや怒りを感じているとき、まずはそういった自然な感情の存在を認めましょう。
人には感情があり、それにしっかりと向き合って、うまく消化することが大事です。
最終的にポジティブに転じられるならばベストだけど、引きずることもあります。
でも、それはそれで自然なことです。
だから、このように伝えることが大事です。
- こんな状況だし、落ち込んで当然だよ
- 泣いてもいいんだよ。それって人間ってことじゃん
- いつでも味方だよ
- 確かにそれだと余裕なくなるね
- 自分もそんな経験をしたことあるよ
まずは、相手の感情に目を向けることと、話に耳を傾け、受けとめることです。
そもそもネガティブな感情が生じるということは、人としてごく自然なことです。
ネガティブな感情があるからこそ、慎重にものごとを考えることができたり、危険を察知して回避することができたりする面もあり、人が生きていく上でとても必要なものでもあります。
過度のポジティブさを要求したり、自分にそれを科したりすることは、本来の人間らしさ、その人らしさを抑圧することにもつながります。
そのような抑圧はストレスを生じさせ、結果的にメンタルヘルスを害してしまう場合もあります。
求められてもいないアドバイスをしない。
求められてもいないアドバイスは、ネガティブな感情を抱くことを「恥」と捉えさせてしまい、それが心理的な痛みを生じさせます。
その痛みから逃れるために何かに依存したり、その人が心を開かなくなったりします。
また、「ものは考えよう」という類のポジティブさがあります。
確かにものごとには複数の見方があり、考え方やものの見方を変えてみることで問題が解決することもあります。
ですが、ネガティブさを含めた自分をそのまま受け容れてくれる人が周囲に一人でもいることだけでいいんです。
人はそれだけで、自然とポジティブに生きていけるようになるものなのです。
エスケーピズム(現実逃避)の時代は終わり
今の時代は、「現実逃避」をして逃れる時代ではありません。
むしろ、しっかりとネガティブな面に目を向け、声を上げていくことが大事な時代だって私は思います。
ビリー・アイリッシュをはじめとした現代のアーティストたちは、しっかりと自分の、そして社会のネガティブな部分に向かい合い、それを表現上でも個人の発言としても発信しています。
ネガティブなことも、感情も、声に出さないと、心の弱さや、時代の危険性を誰も提示できません。
令和の時代だからこそ、人のネガティブさも含めた自分や社会をしっかりと見つめて、感じたことをはっきりと表明していくべきです。
まとめ
この(トキシック・ポジティビティの)概念の本質的な問題は、人がポジティブな気持ちではないことを、間違っている、いけないことだ、不十分である、と見なすこと。
私達はこれからの時代、さまざまな言葉で、ネガティブなことも、苦しみや痛みも吐き出すべきです。
それがネガティブだろうと、それを「恥ずかしい」と感じなくてもいいはずです。
マイナスも、プラスも、どちらもあなたにとって大切な感情だからです。
あなたも、状況にふさわしい感情を避けたり、無視したり、周りの誰かによって、抑圧したりしないでください。
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