- 費用と時間が思っていたよりもかかった
- 余裕だと思っていたのに、想定外の出来事で上手くいかなかった
- 自分は大丈夫だと思っていたけれど、違った
- 憧れていたもので、楽しいと思っていたけれど違った
こういった感情になってしまったことってありませんか?
日常生活でも、ビジネスのシーンでは、よくある光景ですよね。
なぜこんなにも当てが外れるのでしょうか?
その原因は「楽観バイアス」にあります。
人間心理に関する用語で、物事を自身にとって都合よく解釈してしまうこと。
みんな自分の持つ能力以上に、パフォーマンスを出せると錯覚していることでいろんな不都合が生じてきます。
そこで、楽観バイアスが危険な理由とその対処方法をご紹介します。
楽観バイアスとは?
楽観バイアスとはどういったものなのでしょうか。
簡単に言うと世の中に起こることを「自分は大丈夫だろう」と楽観視することをいいます。
- 世界は現実よりも安全
- 自分の能力は平均以上
- 自分は絶対に大丈夫
例えば地震や火災の被害をニュースで見ても、自分にはそういうことは起こらないだろう、と思うこと。
今のパンデミックの世の中でもそうですが、まさにこれだって言う人を周りに見かけませんか?
日常的に交通事故は起きていて亡くなる方も少なくないのは知っている。
でも、自分や自分の身内にはそんな不幸は起こり得ないだろうとか、感染爆発のニュースを見ていても自分の地域は大丈夫、自分は大丈夫だ、って思い込む人のことをいいます。
でも、これは決して他人事ではありません。
大小はあれど、誰にでもそういう経験があるはずです。
楽観バイアスによく似た「正常性バイアス」との違いは?
楽観バイアスによく似た認知バイアスに、「正常性バイアス」があります。
ちょっとした違いがあるので知っておきましょう。
- 楽観バイアス…これから未来に起こるリスクは、自分の身には降りかからないと思うこと
- 正常性バイアス…異常な事態が起こったときに、そんな滅多なことは起きないと思って軽視してしまうこと
違いは、主に楽観バイアスは、これから先に起こることが対象、正常性バイアスは、いま起こっていることが対象となります。
楽観バイアスがヤバい理由について
楽観バイアスも、正常性バイアスも、人間はどちらも多少なりとも持っています。
そこで、楽観バイアスによって犯しやすい過ちとヤバイ理由について見ていきましょう。
自信過剰の傾向
自信過剰の例として、「運転者の9割が自分の運転能力が平均以上だと考えている」★というデータがあります。
正規分布に従う場合、平均以上に運転が上手な人は統計学的には半分しかいないはずです。
このため、4割の人は自信過剰の傾向があると言えます。
確かに、普段なら楽観性がプラスに作用する場面もあるでしょう。
ですが、これはコロナ騒動でも同じことがいえて、多くの人が自分の免疫能力を過信していることになります。
避けるべき危険にわざわざ近づいてしまう人が少なくありません。
感染者数の人数だけを見て、コロナが起きているときに、自分は大丈夫だろう…、自分の地域は大丈夫だろう…って考える人もいると思いますが、そんなことはありません。
同じ人体を持つ地球の人間である以上、複合的な要素を見ると絶対に安全な人、安全な場所なんて存在しないことが分かります。
安全な場所についても、都会の感染者の人数ばかりが取り上げられますが、データを見ても、地方であればあるほど、人口10万人あたり一般・療養病床数と医師の数も不足しているのだから、同じ数の感染者が出たとして、対処不能となるのが早いです。
経済的な打撃についても世界経済が打撃を受ければ、どこも同様です。
「ウィルスに対し悲観的になれ」というわけではないですが、「人間は想像できない事態に直面すると楽観的に考える傾向がある」ことを踏まえ、「通常の注意喚起を無力化させてしまうくらい、正常性バイアスは手強く、自分もそれにかかっている」と認識する必要があります。
計画錯誤
楽観バイアスはビジネスシーンでも計画錯誤が起こりえます。
- 費用を見誤ってしまう
- 納期を見誤る(見通しが甘い)
- 成果(見込み客数など)を見誤る
- 成功率を見誤る
- 自分の適性に関する認識の甘さ
- 信用に足る人物であるかどうか見誤る
ビジネスシーンにおいては、まずは自分の適性に関する認識の甘さ、成果などを見誤るという致命的なミスに繋がります。
完成までの期間を見誤ることで、関係者は計画が失敗に終わったことを知り、信用を失うこともあります。
他にも費用を見誤ったり、信用できる人物かどうか見誤ることで、ビジネスでも致命的な損をしてしまうことに繋がります。
その他にも、離婚率が高いと知っている専門家でも、自分が離婚する確率はかなり低く見積もるという話があります。
専門家のはずでも、そこに「自分」がシミュレートに入ると、計算結果がおかしくなるというかおめでたくなります。
外部要因の無視、競争の無視
何本もの大作映画が、同じ日に封切りされることが多いですが、その理由が各社が絶対の自信を持っているからです。
それは、各自が絶対の自信を持っていて、「競争相手がいても関係ない」と思っているのです。
自分の「楽観バイアス」によって、外部要因を無視し、自分だけが運命を司りコントロールできると思いこんでしまうのです。
一見その通りに聞こえますが、競争相手や、市場などは互いが同じように影響し合うため、ライバルの強さで結果が変わってくるのは必至です。
楽観バイアスの対策とは?大事なときに邪魔をする「楽観」という存在
その他にも、楽観バイアスで、大事な人生の局面が邪魔されることがあります。
- 老後破産の原因とされる。つまり人生がかかっている計画すら失敗させる。
- 計画を立てても、計画自体に楽観バイアスが掛かっており、非現実的な計画になる。
- 予測できる情報があった上で「こうだと思わなかった」ということが起きる
認識は現実よりも甘い。最大限厳しく見積もったつもりで、まだバイアスが掛かっているということ
ここでいう楽観バイアスというものがかかっていると最大限厳しく見積もったつもりで、まだバイアスが掛かっています。
人はいいニュースは喜んで取り入れ、悪いニュースは拒絶する傾向があります。
従って、対策としては一部のデータで都合のいいものばかり見ずに、まんべんなくデータをきちんと調べることです。
あらゆる事象の中で、世間一般ではどの程度が標準の値なのか調べましょう。
似たようなケースで、世間の成功率が平均40%なら、自分の成功率も40%ぐらいと思っておくのが賢明です。
大きなトラブル無く、順調に進んでいるときほど危険です。
自分しか見えていない状態で上手くいっていると、ほぼ100%成功すると錯覚してしまいます。
死亡前死因分析
楽観バイアスを防ぐためには、これで失敗を30%減らせると思っています。
プロジェクトなどを始める前に、「プロジェクト完了後(例えば1年後)にこのプロジェクトが大失敗していたとしたら、その原因は何か?」を関係者で話し合うことです。
見積もりは1.5倍にしたり、企業のプロジェクトの場合、これで丁度いいか、ギリギリかになることが多いそうで、楽観的に見積もらないことが大事です。
2015年にビジネス書大賞【書店賞】を受賞した「エッセンシャル思考」の著者、グレッグ・マキューン氏は、作中で「とりあえず1.5倍で見積もろう」と提唱しています。
備えた上で楽観的でいること
自他の命や人生に関わるとかの、失敗が許されない重要ごとに対しては徹底的に疑うことが大事です。
ですが、全てにおいて悲観的であるって不可能に近いです。
ですので、自分がどう思うかではなくてまずは備えをしっかりとすることです。
備えあれば憂いなしということわざもありますが、自分は大丈夫、ではなくて、客観的なデータを集め、とりあえず、いろんな事象に備えてみる。
全て備えた上で、楽観的でいるなら、失敗をすることが少なくなります。
楽観バイアスがないと生きていけないけれどリアリズムを好きになろう
抑うつ=うつ状態の人間は、楽観バイアスが働かないという説があります。
私の場合、楽観的とは逆の人間で、悲観的な人間です。
実は、うつ状態の者は、それよりも正確に事実を認識するというデータが出ています。
これがいわゆる「抑うつリアリズム」と呼ばれるものです。
通常の人間には楽観バイアスがありますが、抑うつの者にはそれが働きにくいです。
軽~中度のうつ状態、重度だとよりネガティブバイアスが強いと言われています。
楽観バイアスがなければ、人はややうつ気味になると言われていますが、リアリズム、ネガティブ認知、というのは、悪いことばかりではありません。
逆に、楽観バイアスが高い人は、幸福度が高いとも言われていますが、私はリアリズムが好きです。
楽観的で備えているもの良いけれど、先が見えない時代、ここは現実主義でいったほうがうまくいく気がします。
できる限り、リアリズムな考え方を大事にして行きませんか?
まとめ
今回は楽観バイアスについてご紹介しました。
つまり、対策としては、正確な予測を立てて、客観的なデータを集めることが大切。
真逆の位置にあるのが「自分はどう思うか」で、この「自分」をメインで考えることはバイアスがかかる原因になります。
この世の中、このバイアスがかかっているからこそ、人々が楽観的に動いていることを目の当たりにします。
「他人事ではない」という意識を持っているとリスクを軽減してきましょう。